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Mamiko Asakawa

油彩画修復:浮き上がり接着(04)

裏面の清掃をしているあいだに、表の絵具層の損傷が広がらないように、応急的に養生処置を施してありました。それらの箇所に加え、全体的に見られる絵具層の亀裂や浮き上がりに膠で接着する処置を進めました。


修復工程:浮き上がり接着

絵具層の亀裂が広がると、絵具層そのものがキャンバスから剥がれようとし、浮き上がりが生じ、剥落につながります。それを防ぐために、亀裂や浮き上がりに膠(にかわ)水溶液を挿し、電気コテで加温・加圧して、接着します。

油彩画修復 絵具層の亀裂・浮き上がり・剥落
絵具層の亀裂・浮き上がり・剥落

膠は、生物由来の天然の接着剤で、文化財の業界では多く利用されています。今回の浮き上がり接着では、牛膠10%の膠水溶液にして利用しました。作品の亀裂は全面に広がっていたため、この浮き上がり接着の作業はかなりの時間を要しました。

油彩画修復 浮き上がり接着
ポリエステル紙(白い部分)は浮き上がり接着済み

ポリエステル紙を使うことで、亀裂が多い箇所に面で膠を入れることができ、損傷の激しい作品には効率的です。 電気コテで少しずつ加温・加圧することで、浮き上がった絵具層は平らに戻っていきました。このコテで加温する際の温度が高すぎると、絵具層は火傷して損傷になってしまいます。また、適度な加温がないまま加圧すると、浮き上がった絵具層が割れ(折れ)てしまうので、慎重にゆっくりと進める必要があります。


少しずつゆるやかな変化ですが、着実に作品が安全な状態になっていくのは、安心すると共に達成感も感じます。

まだまだ作業は続きますので、少しずつご紹介します!


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